左門と右門
取敢えず九州内の鉄道乗り放題きっぷだけを買っていた。
運転をすると人間観察もできない事が気になるのと、運動不足なので。
出発ギリギリに荷造りをして、音楽をもってゴー。
今回は馴染みのない街に行ってみよう。
車を飛ばせば普段のドライブでも行けるような街でも、各駅停車だと少しは旅行をした気分になれるでしょ。
まず久留米から日田へ。乗り換えのつもりだし、日田はおなじみ。お昼をとろうと思っていたけど、たばこ休憩のみ。
家族連れのお父さんかな、何か「アイがない、アイが、ほら」と話している。
そうさ愛なんて無いのさとニヒルに煙を燻らせていたらば、新設されていた記念撮影スポットのオブジェ。
大きな「H TA」。この空白に人(アイ)が立って「HITA」を完成させるってわけ。
どのお父ちゃんも頑張って「アイ」の役目を。
大分行の列車が来そうなので再びホームへ。
お巡りさんが立っている。そんなに多くはないけれどやはり鉄道マニアの人々が。
一昨年のお盆がそうだったかな。観光列車で人吉あたりをまわったけれど、かなりのカメラマンが列車を取り囲み、必然的にぶっちょう面で座っている私が写りこんでいるであろう、という光景。その時期の色んなブログなどで私の顔が見切れていたはずだ。
向かいのホームに金ぴかの車輌が。ぎょぎょ。
これが「或る列車」らしい。
思わず「列車の写真」、撮っちゃったよ…。
それはそうとしてこっちは普通の各駅停車。さあいくぜ。
山や田園や、河や滝を見ながら、しばらく走る。さすがに腰がイテエ。
途中で二人のリュックを背負った男の子ふたり。中1くらいか。
どちらもふくよかで、丸坊主で眼鏡をかけて、なんかおどおどキョロキョロしている。
男同士の大冒険かな。かわいいなあ、君たちは名誉「柔道部の後輩」に認定。
イメージとしては左門豊作。ダブル左門。こんな子もいるんだね。
列車はどんどん東へ。
途中の湯布院あたりから、オサレなカップルやら女性グループがキャイキャイ言いながら乗ってくる。
オドオドっぷりをさらに加速させるダブル左門&眉間にしわが寄っていく俺。トリプル左門。
大牟田から延べで約5時間。ぶらり途中下車どころではなく、とにかく宿でお湯につかりたい。
宿泊地の大分市街に到着。
お土産をぶらぶら眺めて、駅前の宿でまず入浴。屋上の展望露天で全裸で仁王立ち。
今夜はどうしようか。
足がとにかく浮腫んで浮腫んで。
日が暮れた後に街を散策してみる。
とはいっても移動はこの切符以外使わないと決めていたのでとにかく歩く。あるけあるけ。
繁華街をなんとなくブラついて、喫煙所を探して一服して、その繰り返し。
いろんな事を考える。イヤホンで街の音はシャットアウトしているけれど、ビルや人や車なんかをぼんやり眺める。
こんな日に、こんな時に。
明らかに仕事帰りのスーツ姿の人々が歩いているのを見て、ちょっぴり後ろめたい気持ちになる。
夜の散歩をするようになった10年前の事を思い出す。
今までにどんな出来事があったって、仕事をして休みをもらって、贅沢は出来ないけれど、行きたい所に行ってシンミリしたりタバコを喫したり珈琲を飲んだりしている。いや、贅沢だ。
これで「ひと恋しい」などとノタマウのはもっと贅沢だ。
贅沢だが、やはり家族は持ちたい。
昼間に会った「ダブル左門」のようなこどもが欲しい。
「俺、いつかケッコンして子供が出来たらさー」
このセリフ、もう30年は言っている。
こりゃもう全人類を愛するしかねえな(笑)。トホホ。