グイグイこないのが良い

土曜日。お昼に仕事場から直接駅へ。
新幹線の本数が多い久留米へ一旦北上。

実は旅行で一番好きな瞬間は出発の時だ。荷物を持って街から「出ていく」快感。見慣れた景色も少し違って見える。

さて新幹線に乗り換え、川内へ向かう。ここは年に一度は来ている
レンタカーは三時からの予約だったが、遅れてしまった。駅前で一服して迎えを待つ。

レンタカー屋さんへ着いて手続きをするとカウンター係のお嬢ちゃんが気さくに話しかけてくれる。

「おひとりで観光ですか?ここは何もないでしょう?」

「いやいや、何もないから良いんですよ、はは」とかつっちゃってオレ。

グイグイくるでもなし、かといって事務的でも無し、結構心地よい接客だ。

「いやあ、まあ特に出会いも無けりゃオモシロハプニングも無いんですけどね」

ゲ、いつもの癖で余計な事までしゃべってしまう。

オッサンのつまらん一言にまで笑顔で答えてくれる。


さて温泉宿まで出発だ。街を出て田舎道を走る。とりあえずお湯に浸かりたい。


昨年泊まった宿を通過して、目指す宿へ。

相変わらずここは良い意味で何もない。本来の温泉街からもさらに外れた「農村」にある。

少し気になったのは、ネットで下調べをした際に知った「名物女将」。カナダの方でいろんなブログにも顔が出ていた。

いや、悪くはないのだけど、それこそキャラをグイグイ押し付けられたらどうしよう。アレコレ聞かれたらどうしよう。

なんてのは杞憂に終わった。実際にお会いするとさすが。ピシャッとしている。(たぶんスタッフには厳しそう…)

団体が私より後で予約が入ったらしく、騒がしいかも、という旨のお詫びをされた。

まぁしょうがないよね、一人で来る方が珍しいや。

玄関で靴を脱ぐと、部屋までの廊下は全部畳。部屋も悪くない。角部屋を取っておいてくれた。


団体さんが来る前にって事で早速お風呂。貸し切り状態。さてこれから三日どう過ごそう、なんてことを考えつつブクブクブク。

夕食は街まで出よう、お約束の「夕方五時に流れる村内放送」が聞こえてくる頃に靴を履く。

曲は勿論「夕焼け小焼け」。

コーラスはカラスの鳴き声、蝉しぐれ。斜陽というには少し高めの太陽。ああもう…

理想は「〇〇商店」の店先で炭酸飲料でも飲んで「子供のころの夏」にタイムスリップをしたかったのだけど、店もない。


川内市街に戻り、夕暮れの商店街を歩く。小さなお祭りをやっている。

恒例の「地元のスーパー」に寄って、その土地独特のお総菜や生鮮品を「ウィンドウショッピング」だ。

いや、豆腐ひとつとっても、地方が違うと面白いのよ。そこの人になりきってうろうろ歩く。
繁華街から住宅街へ迷い込んだり。同じ通りに戻ったり。


ひとしきり歩いて車に戻る。もうすっかり夜だ。ここはあまりダークサイドな通りは無かった。

いい感じに荒んだ、世の流れに取り残された感じを求めていたけど。見つけられなかっただけかな?

これぞ!という飲食店も見つけられず、帰りの街道のスーパーで簡単なお総菜とプリンを買って宿に戻る。節約節約。


団体さんは小学生のサッカーチームのようだ。彼らが寝静まった頃にまた温泉に入ろう。

縁側から空を眺めたり、布団の上でゴロゴロしたり。

色々考え事はいつもの様にしてしまうけどね。


小型のシンセを引っ張り出して、いっちょう曲でも作ったろうか。ということでプーピープーピー。


深夜にテレビで流れる「明日の天気」でさえも非日常。

虫の声が心地よい。珈琲もうまい。

 

心を穏やかにするための旅、一日目おしまい。